076992 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Lee-Byung-hun addicted

Lee-Byung-hun addicted

『タチュルコヤ』 (1)

タチュルコヤ (1)

「タリ、タリったら・・畑に入るとオモニに怒られるから」
畑の入り口でタリにひきずられながら困った顔で笑っている揺を眺めながら僕はほっとしていた。
彼女を半ば強引にソウルに連れてきてから一週間。
少しでも彼女と一緒に過ごす時間を増やしたくて多少無理をしてでもスケジュールを調整する毎日。
そんな生活が楽しかった。
揺が元気に僕の腕の中で微笑むだけでもう何もいらない気さえする。
初めて恋をした少年じゃあるまいし。
自分でも可笑しいと思うがこの幸せは何ものにも代え難いと思う。
一度失いかけたものだから余計にそう感じるのだろうか。
タリに引きずられて困った顔をしている彼女は以前の揺のようにすっかり元気になった気がする。
良かった・・彼女のいない生活なんてやっぱりもう考えられない。
「ビョンホンssi・・笑ってないでタリにダメだって言ってよ」
揺に呼びかけられ
「わかったよ」
僕は元気にそう答え揺の元に駆け寄った。

「ねえ、ビョンホンssi、覚えてる?前にここで・・」
揺にそう問いかけられた僕は
「ここではしてないよね」
ちょっとからかってやろうと真面目そうな顔をしてそう答えた。
「うん。してない。ここは畑だからね。」
揺が呆れた顔で言った。
そう。この呆れた顔。何度見せられてもまた冗談を言いたくなる。
僕は揺のこんな顔が大好きだから。
そしてもっとからかって、彼女の笑顔が見たくって
「してみる?」
僕は上目使いにそういうとゲラゲラと笑った。
「もう・・・バカっ!」
揺はそういうと僕の腕を叩いてしがみついてきた。
まさか半分本気だなんて・・思ってないだろうな。
僕はそんなことを考えながら揺の顔を覗き込んだ。

「ここで手を繋いで畑仕事したの、まだ夏だったかなぁ~。すごく久しぶりだわ。やっぱり土はいいわね。生きてる匂いがする」
揺はそういうと僕の隣で目を瞑って大きく深呼吸した。
僕はそんな彼女を抱きしめて彼女が自分の横でしっかりと生きていることを無性に確かめたくなった。
突然、強く彼女を抱きしめる。
「どうしたの?ビョンホンssi」戸惑う揺に
「うん。生きてる匂いがする。」
僕はそう言った。
そして目を瞑ると揺の香りをゆっくりと吸い込んだ。
彼女のやわらかい身体から彼女の体温がゆっくりと伝わってくる・・・。





私の体に彼の温かな想いが静かに伝わってくる。
「うん。あなたは新鮮な匂いがするわ。」
私はわざとふざけてそういうと彼の胸の中でクンクンと鼻を鳴らした。
彼が私を心配してくれているのが手にとるようにわかった。
彼に抱きしめられていると病気の不安もホンへの思いも薄らいでいく気がする。
私は彼を見上げて微笑んだ。

彼は照れくさそうに笑って私のおでこにそっとキスをしてくれた。
こんな時は唇に受ける熱いキスよりもおでこにそっと触れる唇の方がずっと胸に染みる気がする。
彼は私のそんな想いをわかっているのだろうか。
不思議なもので彼は私が望むものを望んだとおりに与えてくれる・・
彼がいうようにいつも私たちは繋がっているのかもしれない。
ずっとこうしていたい・・・こうしていたいけど・・・・。
「さあ、オモニが待ってるから。頑張ろう!太い大根抜いた人が勝ちね。」
私は思いとは裏腹にそういってケラケラと笑うと彼の腕をすり抜けて大根畑に駆け出した。
「早く、全部抜いちゃうわよ」
彼の想いを背中に感じながら大根を抜き始める。
きっと彼は優しく微笑んでいるにちがいない。
そして私がずっと抱きしめていてと言ったらきっと一日中いや本当にずっと一生抱きしめ続けてくれるにちがいない。
だから・・・言わないんだよ。ビョンホンssi・・・。
私は大根を一生懸命に抜いた。


© Rakuten Group, Inc.